星座神話
獅子座
怪力のヘラクレスが大罪を犯し、その罪を償うために１２の苦難と
闘うことになったことは蟹座の神話でお話しましたが、この獅子座の物語は
ヘラクレスがエウリステウスに命令された最初の冒険にまつわるエピソードです。
ギリシャにネメアという森がありました。
しかし人を襲うライオンが棲んでいるので誰もその森に近づくことはできませんでした。
このライオン退治がヘラクレスに出された命令でした。
たかがライオン一頭、怪力のヘラクレスにとって大した難題ではなさそうに思えますが
実はこのライオンこそティフォンという怪物の子どもだったのです。
そんなこととは知らないヘラクレス。
森の入り口にやってきましたが村人に道案内を頼もうにも誰一人おらず、
仕方なく独りで森に分け入りました。
へラクレスの手には剣と弓矢がしっかりと握られています。
森は思いの外奥深く、昼間だというのに夜のような暗さです。
ヘラクレスはライオンを探して何日も歩き続けましたが
ライオンの姿を見ることはありませんでした。
「では向こうから姿を現すのを待ってみよう」
へラクレスは木の根元にどっかと腰を下ろしました。
そして日も暮れ、暗い森がさらに真っ暗になった頃、木々を渡る風の音に交じって
ピシッパシッと枝の折れる音が聞こえてきます。さらにそれはゆっくりと、
しかし確実にこちらに近づいて来るようです。
ヘラクレスは息を殺して音の方向に目を凝らしました。
ふたつの光るものが揺れながらこちらに向かってきます。
「あれはきっと眼だな。とうとうみつけたぞ」
ヘラクレスは呟きながら身構えました。やがて闇の中から浮き上がった姿は
やはり大きなライオンでした。
しかも旅人でも襲ってきた所だったのでしょうか、口から血を滴らせています。
ヘラクレスは早速何本も矢を射掛けて先制攻撃を開始しましたが敵は怪物の子、
いとも簡単に矢を跳ね返してしまいます。
それならと今度は剣を抜いてライオンの頭めがけて振り下ろします。
ところが剣はとけた飴のようにぐにゃりと曲がってしまいました。
もう武器がなく、追いつめられたヘラクレスは落ちていたこん棒を手に取ると
力一杯殴りかかりました。 バキッ。
鈍い音がしたので一瞬ライオンの頭が割れたのかと思ったヘラクレスでしたが、
割れたのはライオンの頭ではなくこん棒の方でした。
今度は怒り狂ったライオンがヘラクレスめがけて飛びかかってきます。
でもこれはヘラクレスにとって好都合でした。
なぜなら彼は格闘技に長けていたので、素早く身をかわすと
ライオンの後ろに回り込みその太い腕でライオンの喉をグイグイ絞めつけたのです。
ヘラクレスは顔を真っ赤にしながら渾身の力を込め
三日三晩ライオンの首を絞め続けました。
そしてとうとうライオンは息絶えました。
この知らせを受けて村人は大喜び。
これで旅人も安心して森を通ることができるようになりました。
獅子座はこの前代未聞の強さを誇ったライオンを記念して神が設けたものです。
古代でのライオン退治は王者の権力を証明する通過儀式だったようです。
太陽を守護星に持つ獅子座
何事にも明るく真っ直ぐなイメージを持たれてしまう獅子座ですが
権力を手にするまでの苦渋の道のりを本能的に知っている獅子座は
実は臆病だったり慎重な面があります。
同じ火の仲間とされる牡羊座や射手座と違うところは獲物を追い求め、
しとめるだけでなく、しとめた上に君臨しようとするところが難儀…
いえ、違うところです。
其処に居座り続けることは大変な根気と労力を要します。
土台がぐらついていればそれは砂の城に住まう裸の王様ということにもなりかねません
何をもって、その上にたちたいと願うのか
その意味を見いだし自分自身を統治することが
獅子座的性質を持つ人の課題なのかもしれません